米株の最小取引単位&約定タイミングの基礎

初心者向け講座
  1. はじめに
  2. 米株の「最小取引単位」の基礎
    1. 1. 基本は“1株”から:ラウンドロット(100株)とオッドロット(100株未満)の違い
    2. 2. 端株(フラクショナル)取引:対応ブローカーと約定のクセ
    3. 3. ETF・REITの最小単位は?投信との違い
    4. 4. ADR(米国預託証券)の比率(1:2, 1:10等)と発注金額の関係
    5. 5. オプション・先物は別物:契約単位(例:株式オプションは通常100株相当)
  3. 注文タイプと“いつ・どう約定するか”
    1. 1. 成行・指値・逆指値(ストップ)・逆指値付指値の基本
    2. 2. タイムインフォース(当日・GTC・プレ/ポスト対応)と有効時間
    3. 3. “マーケット可能な指値”で体感を安定化するコツ
  4. 取引時間と約定タイミング
    1. 1. 正規時間(レギュラー)とプレマーケット/アフターマーケット
    2. 2. 始値・終値オークション(オープン/クローズ)と“寄り/引け成行”
    3. 3. 日本時間での把握(夏時間/冬時間)と実務の注意点
    4. 4. 流動性とスプレッド:時間帯で変わる“約定の質”
  5. 清算・受渡と権利関連
    1. 1. 受渡サイクル(T+1)と現金・信用余力への反映
    2. 2. 配当・権利落ち・権利確定日の見方(レコード日/エクスデート)
    3. 3. DRIP(配当再投資)と端株の増減
  6. よくあるつまずきと対処
    1. 1. 「指値が刺さらない」「思わぬ価格で約定」—発注条件の見直し
    2. 2. プレ/ポストでの約定不可・遅延の理由
    3. 3. 端株注文の“バスケット約定”(一括処理)に注意
    4. 4. 日本の祝日・米国の休場カレンダーのズレ
  7. ケーススタディ
    1. 1. 端株で毎週定額買い:約定時間と平均取得単価の管理
    2. 2. 決算発表日に“寄り指値” vs “引け成行”:どちらが向く?
    3. 3. 配当落ち前後の約定と受渡のスケジュール設計
  8. まとめ

はじめに

米国株デビューで最初に迷いやすいのが、最小取引単位(いくつから買える?)と約定タイミング(いつ約定する?)です。日本株の「100株単位」とは異なり、米株は基本1株から、さらに証券会社によっては端株(フラクショナル)で0.1株・0.01株のように小口でも買えます。本稿では、**単位/注文種別/取引時間/受渡(T+1)/配当再投資(DRIP)**まで、実務で迷わない基礎を一気に整理します。

米株の「最小取引単位」の基礎

1. 基本は“1株”から:ラウンドロット(100株)とオッドロット(100株未満)の違い

米国の現物株は1株単位で売買が可能です。100株をラウンドロット、100株未満をオッドロットと呼び、現在は個人投資家の多くがオッドロットで取引しています(執行自体は広く一般化)。取引所のベスト気配(NBBO)など市場構造の細部はありますが、実務的には大手銘柄の流動性なら1株でも通常通り約定します。
※銘柄や時間帯でスプレッドは変動します(詳細は後述「流動性とスプレッド」参照)。

2. 端株(フラクショナル)取引:対応ブローカーと約定のクセ

端株(fractional shares)は1株未満の売買です。対応の仕組みは証券会社ごとに異なり、たとえばリアルタイムで内部約定する会社もあれば、顧客の端株注文をまとめて(バスケット)特定のタイミングで執行する会社もあります。どの方式かで約定価格やタイミングが微妙に変わるので、取扱い条件を事前に確認しましょう。端株は議決権が付かないなどの制限があるケースもあります。 finra.org+1home.saxo

3. ETF・REITの最小単位は?投信との違い

米国のETFやREITも原則1口(1株)から売買可能です。ETFは上場商品なので、取引時間中に板で売買し、約定タイミングは株式と同様です(端株対応はブローカー次第)。**投資信託(ミューチュアル・ファンド)**は市場でリアルタイム売買せず、1日1回の基準価額(NAV)で約定するという点が大きな違いです。

4. ADR(米国預託証券)の比率(1:2, 1:10等)と発注金額の関係

ADRは米ドル建てで米国市場に上場する外国株の受益証券です。1ADR=現地株○株分のように比率(ラティオ)が定められ、ADR価格は現地株価×比率(と為替)を基に動きます。最小単位は通常1ADR。銘柄ごとの比率を把握すると金額見積もりが正確になります。 fidelity.comInvestor.gov

5. オプション・先物は別物:契約単位(例:株式オプションは通常100株相当)

株式オプションは一般に1枚=原株100株相当(企業アクションで調整される場合あり)。指数先物・ETFオプションなども契約単位が商品ごとに固定なので、現物株の「1株」感覚とは別に考えましょう。

注文タイプと“いつ・どう約定するか”

1. 成行・指値・逆指値(ストップ)・逆指値付指値の基本

  • 成行(Market):最優先で約定を取りに行く。価格は指定しないため、気配が薄い時間帯は想定外の価格で約定するリスク。

  • 指値(Limit)価格上限/下限を指定。約定保証はないが、スリッページを抑制。

  • 逆指値(Stop):指定価格に到達したら成行化(またはStop-Limitで指値化)して執行。急変時は滑る可能性。

  • 逆指値付指値(Stop-Limit):トリガー到達→指値注文を発注。滑りにくいが、飛ばされることがある。

2. タイムインフォース(当日・GTC・プレ/ポスト対応)と有効時間

  • 当日(DAY):当日中のみ有効。

  • GTC(Good-Til-Canceled)有効期限を長めに(ブローカー側上限あり)。

  • 時間外対応:プレ/ポストに有効なフラグを付けないと正規時間のみで発注されることがあります(ブローカー仕様に依存)。

3. “マーケット可能な指値”で体感を安定化するコツ

成行よりも、“マーケット可能な指値”(買いは最良気配より少し上、売りは少し下)を使うと、スピードと価格コントロールの両立がしやすくなります。板が薄い時間帯(プレ/ポスト、引け後の端株一括処理など)は特に有効です。

取引時間と約定タイミング

1. 正規時間(レギュラー)とプレマーケット/アフターマーケット

米株の正規取引時間9:30–16:00(米東部時間, ET)。多くのブローカーがプレマーケット 4:00–9:30 ETアフターマーケット 16:00–20:00 ETを提供します(可否・銘柄・注文種別は各社で異なる)。 ニューヨーク証券取引所Investopediatd.com

2. 始値・終値オークション(オープン/クローズ)と“寄り/引け成行”

寄り(オープン)と引け(クローズ)はオークションで価格が決まり、引けは一日の中で最大の流動性イベントになる傾向があります。引けに合わせるにはMOC(Market on Close)/LOC(Limit on Close)など専用注文を使用(NYダイレクトは15:50 ET以降の新規は原則制限あり)。 ニューヨーク証券取引所+1

3. 日本時間での把握(夏時間/冬時間)と実務の注意点

日本(JST)から見ると、

  • 夏時間(EDT, UTC-4):正規時間 22:30–翌5:00(JST)、プレ 17:00–22:30、アフター 5:00–9:00

  • 冬時間(EST, UTC-5):正規時間 23:30–翌6:00(JST)、プレ 18:00–23:30、アフター 6:00–10:00
    祝日や半日取引(引け13:00 ET)もあるため、取引所カレンダーを定期確認しましょう。 ニューヨーク証券取引所Webull

4. 流動性とスプレッド:時間帯で変わる“約定の質”

プレ/ポストは参加者が少なくスプレッドが広がりがち。大型株でも成行は滑りやすいので、指値が基本。決算直後・ニュース直後は板が乱れやすく、引けオークションは逆に流動性が集中しやすい——時間帯の特性を理解して注文条件を切り替えるのがコツです。 ニューヨーク証券取引所

清算・受渡と権利関連

1. 受渡サイクル(T+1)と現金・信用余力への反映

米国株式・ETF・多くの社債はT+1(約定翌営業日受渡)。2024年5月28日にT+2→T+1へ短縮されました。受渡日前の資金再利用ルールは証券会社ごとに異なるため、余力の計算はブローカー仕様を確認しましょう。 Investor.govSECSIFMA

2. 配当・権利落ち・権利確定日の見方(レコード日/エクスデート)

配当は権利確定日(Record Date)の名簿に載っている株主に支払われます。実務では権利落ち日(Ex-Dividend Date)の前日までに保有している必要があります(同日買いは配当権利なし)。約定と受渡の**タイムラグ(T+1)**がある点を念頭に、権利取りのスケジュールを組みましょう。

3. DRIP(配当再投資)と端株の増減

多くのブローカーはDRIP(配当自動再投資)を提供し、配当金で同銘柄の株式(端株を含む)を自動取得できます。手数料無料が一般的で、端株として保有数量が小数点で増える運用になります。設定可否や再投資のタイミング(支払日に行う等)は各社差があるため、利用ガイドを確認しましょう。 バンガードSchwab BrokerageDriveWealth Legal Hub

よくあるつまずきと対処

1. 「指値が刺さらない」「思わぬ価格で約定」—発注条件の見直し

板が薄い時間帯(特にプレ/ポスト)やイベント直後は成行で滑りやすい指値またはマーケット可能な指値に切替え、有効時間(時間外対応フラグ)を正しく指定。GTCは長期放置で不要な約定が出ないよう、定期見直しを。

2. プレ/ポストでの約定不可・遅延の理由

ブローカーによっては時間外に対応しない銘柄・注文種別があります。端株や一部ETF、寄り/引け専用注文正規時間のみが一般的。時間外対応の可否手数料/スプレッドをヘルプで確認しましょう。 ニューヨーク証券取引所Investopedia

3. 端株注文の“バスケット約定”(一括処理)に注意

端株はリアルタイム執行でない場合があり、所定の時刻にまとめて約定されます。約定時間・価格の決め方(例:その時点の市場価格、VWAP等)はブローカー資料で事前確認を。 finra.org

4. 日本の祝日・米国の休場カレンダーのズレ

日本が祝日でも米国市場は平常通りのことがあり、入金やサポート窓口のタイミングが合わない場合があります。NYSEカレンダーや証券会社の営業日程をブックマークしておくと安心です。 ニューヨーク証券取引所

ケーススタディ

1. 端株で毎週定額買い:約定時間と平均取得単価の管理

端株のバスケット約定方式では、毎週同じ時刻に一括約定されることがあります。執行タイミングが一定なら、**平均取得単価(DCA)**の推移を把握しやすく、価格変動のブレも比較しやすくなります(方式はブローカーに確認)。 finra.org

2. 決算発表日に“寄り指値” vs “引け成行”:どちらが向く?

決算直後は気配が飛びやすいため、寄りで値段を決めたいなら寄り向けの指値、一日の情報と需給が出揃う引けの流動性を重視するならMOC/LOCも選択肢。いずれもイベント時はスプレッド拡大に注意。 ニューヨーク証券取引所+1

3. 配当落ち前後の約定と受渡のスケジュール設計

Ex-Date前に保有して権利取得→支払日にDRIPで端株が増えるという流れが一般的。T+1で受渡が早まった分、売買の前倒し・資金繰りが楽になりました。配当再投資のオン/オフはブローカー画面で要確認。 Investor.govバンガード

まとめ

  • 最小取引単位:現物株・ETFは1株から、ブローカーにより端株も可。ADRは比率を確認。 fidelity.com

  • 約定タイミング:正規9:30–16:00 ET、多くの会社が4:00–9:30/16:00–20:00 ETの時間外を提供。寄り/引けはオークションで決定、引けは流動性が厚い。 ニューヨーク証券取引所+1Investopedia

  • 清算T+1で受渡が翌営業日に短縮(2024/5/28~)。資金・余力の反映はブローカー仕様を確認。 Investor.gov

  • 配当再投資:DRIPで自動的に(端株含め)再投資できる。設定・執行時刻は会社ごとに差。 バンガード

最後に、注文条件(指値/成行・時間外フラグ・有効時間)を毎回確認し、端株の執行方式と**カレンダー(夏冬時間・休場)**を手元に控えておけば、約定の“予想外”は大きく減らせます。

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